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きょうりゅうていのぼうけん

恐竜艇の冒険

海野 十三

「少年読物」別冊、1948(昭和23)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,806 字 · 22 页

青空文庫

五個のヤシの実は、やっと両手に抱えて持ちはこびができる。ぼくとサムとは、うんうんいいながら林を出て、艇のつないである湾の方へよたよた歩いていった。

そのときである。サムが、「あっ」といって立ちどまった。

「どうした、サム」と、ぼくはたずねた。

「うむ。ぼくの目はどうかしているらしい。恐龍の首が二つ見えるんだ」

「あははは、何をいっているか」

と、ぼくはばかばかしくなって、湾の方を見た。

「あっ!」

ぼくの腕からヤシの実がころがり落ちた。ぼくの膝は急にがくがくになった。のどがからからになって、声がでなくなった。なぜ? なぜといって、ぼくは見たのだ。ぼくらの恐龍のそばに、もう一頭の恐龍が長い首をのばし、口を開いたり閉じたりして、のそのそしているのであった。それに、作り物の恐龍でないことは、一目で分かった。大きな胴が、マングロープをめりめりと押し倒している。長い尻尾が、ぱちゃんと大きくヤシの梢を叩く。ころころとヤシの実がころがるのが見える。ほんものの恐龍だ。

「逃げよう、本物の恐龍だ」

サムもこのとき悟ったと見え、ぼくの腕をとった。ぼくは無言で廻れ右をして走り出した。