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「あくまのあしあと」
「悪魔の足跡」
中谷 宇吉郎
「西日本新聞」1955(昭和30)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,080 字 · 3 页
あたかも塀をつき抜けたかの如くに、向う側につづいている。家の方へ向かってまっすぐに行って先が見えなくなったこともある。そこで切れたものと思ったら、驚いたことには、屋根の上にちゃんと同じ足跡がついている。しかも足跡間の距離は、依然として八インチ半である。
この足跡は一本の線になっていたわけではなく、この地方の方々にあった。そのうち一番人を驚かせたのは、エクゼ河を横切った足跡であった。この河は、この付近で幅が二マイルもあるが、こっち側の足跡は堤防のところで切れ、その対岸に、延長線に沿って、ちゃんと足跡がつづいていた。何列もあった足跡の総延長は、百マイル以上に上っていた。
ゼサップ先生は、この足跡を、宇宙人が特殊の放射線を使って、宇宙船の高度測定をした痕ではないかと言っている。アメリカ人は、一つ現実を離れると、とんでもない逆の方向に行くらしい。この事件は、当時の英国で大評判になった。というのは、その十五年前、一八四〇年に、スコットランドの山岳地帯で、不思議な動物の足跡が、数回発見された記憶がまだ残っていたからである。その時も普通の四足獣の足跡ではないということがわかっただけで、正体はつかめなかった。