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かなしいごかい

悲しい誤解

豊島 与志雄

「女性改造」1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页

青空文庫

会社全体の実情だって、われわれには何にも分らない。会社全体が赤字かどうかも疑問で、現に、三階の広間は、壁が新らしく塗りかえられ、豪奢な椅子卓子が据えつけられて、会社が新たに何を目論でるのか、われわれには見当もつかない。われわれには……われわれには……。

彼の話を聞いていると、われわれの連発ばかりで、それが哀訴するように響き、へんにもの悲しくなる。愚痴ではなく、憤慨してるのだが、それならば、彼自身、いったいどう動くつもりなのか。

「明日の懇談会には、僕たちで、爆弾を投じてやろうじゃないか。」

僕たち……やはり、単数の僕ではなかった。力は団結から出て来るものだが、団結は個々の意志に依るものでなければならない。その根本のものが、私たちには欠けてるようだった。ただ、彼は朗かであり、私は憂鬱だ。憂鬱の底から眺めると、彼の朗かさも人形のそれのようで、同情の念も湧かず、それがますます私を淋しくさせた。

「堀田のやつ、けちな退職金なんかで、どうするつもりかなあ。」

朗かな笠原には、堀田に同情する余裕があったのだ。

「やきいも屋ぐらい出来るさ。」と私は言った。

「なに、やきいも……。