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かなしめるこころ
悲しめる心
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,423 字 · 33 页
我が妹の 亡き御霊の 御前に
只一人の妹に先立たれた姉の心はその両親にも勝るほど悲しいものである。
手を引いてやるものもない路を幼い身ではてしなく長い旅路についた妹の身を思えば涙は自ずと頬を下るのである。
今私の手元に残るものとては白木の御霊代に書かれた其名と夕べ夕べに被われた夜のものと小さい着物と少しばかり――それもこわれかかった玩具ばかりである。
柩を送ってから十三日静かな夜の最中に此の短かいながら私には堪えられないほどの悲しみの生んだ文を書き上げた。
これを私は私のどこかの身にそって居る我が妹の魂に捧げる。
仕立て上げて手も通さずにある赤い着物を見るにつけ桃色の小夜着を見るにつけて歎く姉の心をせめて万が一なりと知って呉れたら切ない思い出にふける時のまぼろしになり夢になり只一言でも私のこの沈み勝な心を軽く優しくあの手さな手で撫でても呉れる事だろう。
あの細い腕を私の首に巻いて自分の胸にあの時の様に抱きしめても呉れるだろう。
はかないその日のうれしさを今か今かと涙ながらに待ちながら――
大正三年九月二十六日
こよなく尊き 宝失える 哀れなる姉