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かなしめるこころ
悲しめる心
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,423 字 · 33 页
電報を受取った日のまだ明るい頃友達の所から本の小包をうけとった。
まだ頁を切ってない本が三四冊あったので私は八時間の長い間そんなに退屈もしないですんだ。
飛ぶ様に変って行く景色、駅々で乗込んで来る皆それぞれの地方色を持った人達に心がひかれて私は自分が今妹の病気のために帰京するんだなどとは云えないほど澄んだ面白い様な気持になって居た。
氏家駅に来るまで私は本を見景色をながめして自分ではらう事の出来ないほどの不安には迫られないですんだ。
氏家から乗って来た五つ六つの娘が痛々しくやせて青い営養不良の顔をして居たのを見たら年頃も同じ位なんですっかり気になり出して仕舞った。
あんな青いだろうか、あれほどやせただろうか、どうか悪い病気でなくてあればいい、生きて居て欲しい。不安や恐ろしさや悲しさが私の心の中に渦巻き立つと胸がこわばって息をするにさえ苦しい様になった。
一つところを見つめて私はせわしい息を吐きながら布団の中に埋る様にして居る幼い妹の事を思った。
涙は絶えずまぶたに満ちてそれでも人前を知らん顔を仕終せ様とするにはなかなかの骨折で顔が熱くなって帯を結んだあたりに汗がにじむ様だった。