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かなしめるこころ
悲しめる心
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,423 字 · 33 页
死ぬとか生きるとかと云う事はまるで頭になく只私と仲の良い小さい娘に会いたいと云う心ばっかりに司配されてスタスタと走って行ったら汽車で行くよりかも近路をしたら早くはあるまいかとさえ早く行きたいと云う心が思わせた。
平凡な田舎から出て見ると都のステーションとは気がポーッとなるほどせわしない活気のある世界であった。
家までやとったまだ若い車夫はずるくて鈍間でゆるい足袋を雨上りのぬかるみにつけてベジャベジャベジャベジャ勢のない音を出してゆるゆると走った。
後から来た車がいかにも得意らしくスイスイと通り越して行くと私はかんしゃくを起して蹴込をトントン蹴った、それでもズドンズドンしたらよけいおそくなるからと思っていいかげん塩梅してストンストンやってかすかな満足を得ようとする自分の心が私には可笑しくもあった。
家の門を入ると車が二台置いてあった。
「よくないな
と思うと頭へ体中の血がのぼる様になった。車屋へお金をはらおうと思うと銅貨が一つ足りなかった。
柱のベルをはげしくならすと、
「お帰りなさった。
と云う声が聞えると女達は私のわきに泣きころげた。
「どうなの? え、どうなのよ。