轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かなしめるこころ
悲しめる心
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,423 字 · 33 页
震えて口が利けない様だった。女二人は私の靴を片方ずつぬがせて呉れた。手伝に来た男は車屋に払い私の荷物を運んで行った。
目がくらくらする様な気になりながら私は一番奥に居る事だと思ったので西洋間へ速い足どりで入った。と、私は棒立ちに立ちすくんでしまった。それと同時に止めても止らない涙がスルスルスルスルと頬をながれ下った。まあ何と云う事だろう。
一番先に私の眼にふれたのは沢山ならんだ薬瓶でその次には二人の医者、両親と女達にかこまれて居る私の妹は一番最後に目に入ったほど大切に取りまかれ、大切にとりまかれるほど悪く悲しまれて居た。
パアッと瞳の開いた輝のない眼、青白い頬、力ない唇、苦しさに細い育ちきれない素なおな胸が荒く波立って、或る偉大なものに身も心もなげ出した様に絶望的な妹の顔を一目見た時――おおあの時の恐ろしさ、悲しさ、いかほど年月を経るとも、私に生のあるかぎりは必ずあの顔を忘れる事はあるまい。
どうして忘られ様、可哀そうな。
母は私の顔を静かに見あげて妹にその視線を向けた。取り乱さない様子――強いて気を落つけて居る母の顔にはいかにも苦しそうな表情があった。