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ひがんについて
悲願に就て
――「文芸」の作品批評に関聯して――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,329 字 · 17 页
だから彼の甘さには時々彼の悲しさから鬼気が伝わってゆくのである。併しながら、その甘さが単純な甘さで終っていないからといって、私は必ずしも之を高く評価しない。
由来甘さというものはその正体が消極的なのだ。積極的な力となって彼の悲願の進路をねじまげるというような障りとなることが全くない。その点悲願を深めるに都合はいいが、生き返ってくる力が乏しい。この反対に「からさ」は積極的である。理知的であり批判的なものである。ここには生き返る可能性を自らの中に蔵している。私としてはこの二つの態度のうち躊躇なく「からさ」の方をとるものであるが、何分積極的に作用してくるだけに自らの罠へ自ら落ちこんでしまうことが甚だ多くあるように考えられる。罠へ落ちずに渡りきろうというのが余り勝手な考えで、或いは幾度も罠にかかり罠を逃れて行く必要があるのかも知れぬ。併しそれはとにかくとして、このことは断言してもいいように思う。「からさ」は「あまさ」を否定することによって達成せられるものではない、又習慣をつき破るということが決して単純に習慣の反対を行うことではないだろう。正、反、合とか止揚とかいう単純な法則が数十世紀の虚妄と真実との複雑なカラクリをかけた我々の精神へ倫理へそのまま適用されることなぞ決して想像することができないのだ。