轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
山川方夫『愛のごとく』。同一底本的分册已合并为一书。收入:愛のごとく、演技の果て、その一年。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,908 字 · 210 页
バンド・マンたちの気がるな漫才じみたやりとりといえばそれまでだが、なぜかその言葉は信二の胸に深く刻みこまれた。だが、信二は、あとになって自分がその言葉を呪文のようにくりかえすことになろうとは、考えていたのではなかった。彼は充分に、自分が他人たちにたいし無関心であるとそのときは信じていた。
「美人は、一人もいなかったね」信二はわざと落着いた声でいった。
安達は笑い出した。「へえ、いい度胸だ。こいつ、もう品定めをしてやがった」
もと病院を改造したのだという天井のたかいホールは、三度目のステージのころから急激に客がへりはじめて、とたんに殺風景なものになった。青や赤の照明もながれず、それは屋内競技場に似ていて天井に鉄骨が組まれ、ステージのまるく張り出したフロアを見下ろして、三方にせりあがる階段教室のような席があった。一定の明るさの光の落ちているフロアとその席との境には、ぐるりとたくさんのテーブルが群がり、兵士たちはもっぱらその蔭の部分で酒を飲んだ。そこに黒いスーツの女がいた。
その女はほとんどテーブルから立たなかった。かすかな微笑を頬にうかべたまま、女はフロアを動く人びとに気倦げな視線を送っていた。