轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あいのために

愛の為めに

甲賀 三郎

「探偵文藝 第2巻第4号」奎運社、1926(大正15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,919 字 · 24 页

青空文庫

私が近寄らないうちに、私と反対の方から、一人の憂鬱な皺を額に刻んだ頑丈そうな六十近い年頃の紳士が太いステッキを振り振り婦人の傍へツカツカと寄って、一言二言囁いたと思うと、一緒にさっさと歩き出したのである。

私は機会を失して茫然とその後姿がだんだん小さくなるのを見送っていた。

だが、私は幸されていた。その夜、思いがけなく、赤ン坊を人に預けたまま、行衛を見失った母親が、その赤ン坊の捜索を私に頼む為めに私を訪ねて来た。美しい丸髷の婦人で、今日東京駅前で見たその人であった。

再び妻の手記

流元で氷を砕いて立上ろうとすると、くらくらとして急にあたりが暗くなって終った。それからどれ位経ったか、赤ン坊の泣声に気がつくと、私は台所の板敷につっ伏していた。永い間の寝不足で瞼がひとりでに塞って、気が遠くなるのを一生懸命に堪えて、部屋に這入ると、寝ている夫の頭にそっと氷嚢を載せた。それからそっと三畳に寝ている赤ン坊を覗き込んだ。

夫は一時下りかけた熱がブリ返えして、高い熱が又一週間続いている。赤ン坊は幸せと丈夫だったけれども、病気の夫を抱えて、馴れない赤ン坊の世話だもの。