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せいちょういよくとしてのれんあい

成長意慾としての恋愛

宮本 百合子

「三田新聞」1938(昭和13)年11月10日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,702 字 · 6 页

青空文庫

ここでは、自身と対手との個性が、その出生や成長期の環境からうけている実に多様な諸条件によって交渉し合うばかりでなく、外部的な事情との接触、摩擦、克服の過程で、それぞれの恋愛が形づくられ、完成され、或る場合は破滅させられて行くのである。今日の若い人々が、自身の人生に恋愛を認めていると同時に、一面では多くの場合暗黙の裡に恋愛と結婚生活とを切りはなして考え、行動していることは、注目をひく点ではなかろうか。十人のうち何人かは、淡泊な微笑で自分たちの恋愛を認めるにちがいない。ところが、ではそれは結婚に到るものかと訊ねたとすると、恐らく全部の人が些か困惑し、或は問うまでもないこととして、結婚は思っていない意志を表明するであろう。これは何故だろうか。

少年の感情の世界にひそかな駭きをもって女性というものが現れた刹那から、人生の伴侶としての女性を選択するまでには成育の機変転を経るわけである。感情の内容は徐々に高められて豊富になって行くのだから、いきなり恋愛と結婚とをつなぎ止めてしまうことには、当を得ない点がある。十分にそれを考慮に入れてしかも尚、今日の若き人々が、恋愛について比較的公開的な心持になっているのに、半面愛する者を愛妻として期待しない気持の中には、何かそのままに見過せないものが潜んでいると思う。