轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるさっかのやくび
或る作家の厄日
豊島 与志雄
「群像」1949(昭和24)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,284 字 · 21 页
今に彼女が来るだろう。起き上り、整理小箪笥の一番下の抽出を探ると、幾つかの小壜がある。机の上に、数粒の錠剤をころがしてみる。扁平な白い錠剤をもてあそぶのは、童心の喜びだ。おれはそれらを愛用してるのではない。ヒロポニアンでもなければ、アドルマーでもない。ただ必要に応じて、ちょっとかじるだけだ。味のないこともあり、苦いこともあり、甘酸いこともある。いずれにしても後味はよくない。それを消すにはやはり酒に限る。
考えることがあるのだ。重大な考えごとがあるのだ。少しぬる加減の酒を、思惟の速度に合して、口にふくむだけで、眼を見据えていると、室の天井も四壁も消失して、心気は天地と合体する。微風が音もなく流れ、露が静かに結ぼれてる、晴朗な夜である。
「先生。」
こんどははっきりした声だ。
「はいってもよろしゅうございますか。」
「ああ、いいよ。」
さよ子はノートを持ってはいって来る。
「ここのところが、少し分らないんですけれど……。」
「まだ書いてるのかい。明日でいいよ。」
「でも、明日になって、そんなものだめだから、もうやめなさい、なんて、先生に言われますと、困りますもの。