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「あるおんな」についてのノート

「或る女」についてのノート

宮本 百合子

「文芸」1936(昭和11)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,281 字 · 13 页

青空文庫

頭も気も狭い信徒仲間の偏見と、日本の重い家族制度の絆と戦おうとする葉子を、作者は彼女の敗戦の中に同情深く観察しようとしている。人間の生活の足どりを外面的に批判しようとする俗人気質に葉子と共に作者も抵抗している。それらの点で作者の情熱ははっきり感じられるのであるが、果して作者は葉子の苦痛に満ちた激情的転々の根源を突いて、それを描破し得ているということが出来るであろうか。

私の感想では、作者は葉子と共に、あの面、この面、と転々しつつ、遂に葉子の不幸の原因は掴み出すことが出来なかったように思える。葉子が自分の死の近いことを知った時、自分の二十六年の生涯を顧みて、それは間違いであった、だが、誰の罪だか分らないけれども後悔がある、出来るだけ生きてる中にそれを償わなければならない、という意味の述懐をしている。そして、木村との関係、倉知との関係が何れも間違っていたということを言っている。最後には凡てを思い捨てた形で、許すことも許されることもない、凡ての人に水の如き一種の愛を感じるような心持に置かれている。

葉子は自分の生活を間違っていたとだけ云っているが、葉子と共に作者もそこで止まってしまっているように見える。