轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
「婦人倶楽部」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,447 字 · 37 页
故郷へ帰ってから、私はお盆にお詣りする筈だったが、彼の事で気が進まなかったのである。それで、暮のうちに一度詣りしておこうかと、お母さんが云い出されたのをいい機会に、死んだ彼――私はそう信じきっていた――の冥福を祈りたい気もあったので、すぐに行くことにきめた。
お寺まではそう遠くなかったので、私達は歩いてゆくことにした。うち開けた田圃道を十町ばかり行って、なだらかな丘の裾を少し上ると、其処にお寺があった。野の香りが病後の私には快かった。空は珍らしく綺麗に晴れていた。柔い冬の日脚も楽しかった。
お寺に着いて、先ず裏の墓所に詣で、次に本堂にお誇りをした。私は彼の をもしみじみと祈った。
それから私達は、しいて庫裡の方へ招じられて、お茶菓子などの接待を受けた。和尚さんは私の姿をつくづく眺めながら、私の子供の折のことなどをお母さんと話された。私は黙って傍に坐っていた。
その時、白い平素着をつけた年若なお坊さんが、私達に挨拶をしに出て来た。私は何気なくその顔を見ると、ぞーっと身体が竦んで、眼の前が暗くなった。危く叫び声を立てる所だった。彼だ、彼だ! そのお坊さんは彼だったのだ! 私はもう何にも覚えなかった。