轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるそびょう
或る素描
豊島 与志雄
「新潮」1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,802 字 · 24 页
その冷りとした感じは、私の下らない道徳心の故だったかも知れない。なぜなら、長谷部は実に素敵なことをやってのけてしまったのである。だが、一歩退いて考えてみると、もし事情が一寸異っていたら、或は重大な犯罪をも最も自然に行ったかも知れない、と思わせるようなものが彼のうちにあった。
「もしそれを受取らなければ、殺されるかも知れないと……そんな気がしましたので……。」
長谷部からなぜ指輪を受取ったかと聞かれた時、彼女はそう答えたそうだった。
彼女というのは、彼が英語の教師をしてるその小さな私立大学の、教員室の給仕だった。
一口に云えば、事件は簡単だった。彼が勤めてる私立大学の教員室に、二人の女給仕がいた。一人は髪の毛の縮れた顔のいかつい二十二三歳の女で、一人はまだ十六七の小娘だった、が髪の濃い目鼻立の整った、一寸小綺麗なそして無邪気な様子だった。その若い女給仕へ、彼は或る時青い宝石入りの金指輪を買ってきて、無理に受取らせてしまったのである。普通なら何でもないことなんだが、学校内の出来事なだけに、重大な問題となった。
その日の午後四時半頃、他の室で事務を執っていた学生監が、ふと教員室にはいっていった。