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あるりょうにんのざんぱい

或良人の惨敗

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,067 字 · 15 页

青空文庫

「それでもお父さんの亡くなった時は北海道から駈けつけたじゃないか? あれでナカ/\好いところもある。一番泣いたのは常二郎兄貴だったからね」

「当り前ですわ。不断音信不通で一番苦労をかけていたんですもの。兄さんの義理は後にも前にもあれっきりじゃございませんか? 大地震の時だって見舞状一本下さいませんでしたわ。此方から知らせて上げたら、漸くのことで、何うせ皆焼け死んだろうと思って諦めていたなんて言って寄越したでしょう? 憎らしいわ」

「まあ/\、兄貴のことはもう勘弁してくれ。何うせ厄挫ものさ。金を取られる上にお前から油を絞られちゃ俺も立つ瀬がない。これからは万事誠意をもって相談するから機嫌を直しなさい」

と鳥居氏は結局兜を脱いだ。

「私、兄さんのことで機嫌を悪くしているんじゃありませんわ。あなたが御自分勝手だから少し申上げたいんです」

と夫人はこれから本論に入るのだった。

「それだから以来は誠意をもって相談すると言っている」

と鳥居氏は又少し語気を荒くした。兎に角折れて出たのに未だ納得しないとは増長していると思ったのである。

「その誠意と仰有るのが、私、信じられませんの」