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せんじょう
戦場
夢野 久作
「改造」改造社、1936(昭和11)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,769 字 · 51 页
そうして、そんな連中を何でもない普通の自傷兵とゴッチャにして、あんな風に脅迫して、無理矢理に戦線へ送り返しているのではないか。……だから、私を利用して、その計略の裏を掻いた候補生が、あんなにニコニコと微笑しているのではなかろうか……。
……といったような途方もない、在り得べからざる邪悪な疑いが、腸の底から湧き出す胴震いと一所に高まって来た。そうしてソンナような馬鹿馬鹿しい、苦痛にみちみちた悪夢からヤッと醒めかけたような……ホッとしたような気持になると同時に私は又、急に胸がムカムカして嘔きそうな気持になって来た。何とも感じなくなっていた屍臭と石油臭が、俄に新しく、強く鼻腔を刺戟し初めた……が……そのまま無理に平気を装って、軍医大佐の背後に突立っていた。
そうした私の疑惑を打消すかのように、向い合っていた二条の一列横隊は、私たちの眼前で同時に、反対の方向を先頭にした一列縦隊に変化した。そうして一方は元気よく、勝誇ったように……一方は屠所の羊のように、又は死の投影のように頸低れて、気絶した仲間を扶け起し扶け起し、月光の真下で別れ別れになって行った。
その別々の方向に遠ざかって行く兵士の行列をジイッと見送っている中に、私は又も、更に新しい、根本的な疑惑の中に陥って行った。