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げさくしゃ

戯作者

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年4月1日春季特別号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,218 字 · 21 页

青空文庫

「こいつアどうも驚いたな。いや実に甘いものだ。この力強い文章はどうだ。それに引証の該博さは。……この塩梅で進歩としたら五年三年の後が思い遣られる。まず一流という所だろう。……三十年五十年経った後には山東京伝という俺の名なんか口にする者さえなくなるだろう。……これこそ本当に天成の戯作者とでもいうのであろう」

こう考えて来て京伝はにわかに心が寂しくなり焦燥をさえ感じて来た。とはいえ嫉妬は感じなかった。むしろ馬琴を早く呼んで、褒め千切りたくてならないのであった。

手錠五十日

明日とも云わず其日即刻、京伝は使いを走らせて馬琴を家へ呼んで来た。

「滝沢さん、素敵でげすなア」

のっけから感嘆詞を浴びせかけたが、

「立派なものです。驚きやした。悠に一家を為して居りやす。京伝黙って頭を下げやす。門下などとは飛んでもない話。組合になりやしょう友達になりやしょう。いやいや私こそ教えを受けやしょう」

こんな具合に褒めたものである。

馬琴は黙って聞いていたが、別に嬉しそうな顔もしない。大袈裟な言葉をのべつ幕無しふんだんに飛び出させる京伝の口を、寧ろ皮肉な眼付きをして、じろじろ見遣るばかりであった。