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げさくしゃ

戯作者

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年4月1日春季特別号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,218 字 · 21 页

青空文庫

なるものを語り出した。

黙って馬琴は聞いていたが、時々水のような冷い笑いを頬の辺りへ浮べたものである。

聞いてしまうと軽く頷き、

「よろしゅうござる、代作しましょう」

「では承知して下さるか」

「ともかくも筆慣らし、その筋立てで書いて見ましょう」

「や、そいつア有難てえ。無論稿料は山分けですぜ」

しかしそれには返辞もせず、馬琴はノッソリ立ち上ったが、やがて自分の机へ行くと、もう筆を取り上げた。

筆を投ずれば風を生じ百言即座に発するというのが所謂る馬琴の作風であって、推敲反覆の京伝から見れば奇蹟と云わなければならなかった。

その日から数えて一月ばかりの間に、実に馬琴は五編の物語をいと易々と仕上げたのである。しかも京伝の物語った筋は刺身のツマほども加味して居らず大方は馬琴の独創であって、これが京伝を驚かせもし又内心恐れさせもしたが、苦情を云うべき事柄ではない。で、黙って受取って自分の綴った二編を加え蔦屋の手へ渡したのである。

七編の草双紙は初春早々山東京伝の署名の下に蔦屋から市場へ売出されたが、やはり破れるような人気を博し今度は有司にも咎められず、先ずは大々的成功であったが、これを最後に京伝は、草双紙、洒落本から足を抜き、教訓物や昔咄や「実語教稚講釈」