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てがみ
手紙
久生 十蘭
「小説と読物」1949(昭和24)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,158 字 · 30 页
海岸からいきなりマングローブの林がはじまり、世界の涯までもあるジャングルにつづいています。ジャングルは昼も暗く、人もケダモノも、なにも住んでおりません。ジャングルのない、すこしばかりの海岸に、とびとびにパプア人の部落があるだけであります。しかし私どもが行きますと、ミミカに海軍の人夫がいて、飛行場をつくって居りました。
ちょうど雨季がすんで乾季に入り、風は、毎日かわりなく西から吹き、南へ帆で走るためには、今から三月までの、二カ月のあいだがいちばんよいのです。私がそういいますと、村上さんは、
「では、満期の手続きをとるから、お前はそれまで飛行場つくりの手伝いをしていてくれ」といいました。
私は村上さんと離れたところに住み、パプアたちと飛行場をつくる手伝いをしていますうちに、パプア語がわかるようになりましたので、川向いのケクワの部落へ遊びに行き、ンブナムというスルタン(酋長)と知合いになりました。ケクワのプラウは、二十人から三十人も乗る戦争の丸木舟ばかりですので、腕三つ分、約五メートルの舟と、檣を一本こしらえてもらうようにたのみ、斧一梃、赤木綿二反、カナカナ煙草五束、新聞紙六枚の値段にきめました。