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てがみ
手紙
久生 十蘭
「小説と読物」1949(昭和24)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,158 字 · 30 页
村上さんは水でマンデーをすると、青くなって咳をし、すぐ風邪をひきました。私は隊から帰ると、毎日そのためにお湯を沸かしました。村上さんは非常に汗をし、なんべんも夜中にシーツをとりかえました。私が聞きますと、ボルネオのジャングルにいるときマラリヤをやり、それがまだなおらないのだといいました。
村上さんは夜食をすると、そのまま朝まで本を読みました。私はいやでなりませんでしたけれども、眠られない病気だと聞き、気の毒になり、本を読んでいられるあいだ、コッピーといったらすぐコッピーをあげられるよう、毎晩、部屋の入口の靴拭きの上に寝ました。村上さんといる二年の間、自分の寝床へ行って寝たことは、ただの一度もありませんでした。
しばらくして、プアサ(インドネシア人の正月)の休みに、ブル島へ母や妹に逢いに行って帰って来ますと、村上さんが、
「おい四郎、お前は小さなプラウでブル島まで行ってきたのだそうだな、えらいことをやるな!」といいました。それで私は、
「ブル島ぐらいわけはありません。ここから濠洲まででも行きます。十五尺ばかりの小さな舟で、北濠洲の海を二百浬も航海していました」