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ぎじゅつのてつがく

技術の哲学

戸坂 潤

「技術の哲学」時潮社、1933(昭和8)年12月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,443 字 · 164 页

青空文庫

――以上述べた移行過程は、自然科学に於ける実験を頭において考えたのであるが、言葉の適切な変更によって、之を社会科学に於ける実験にまで押し及ぼすことが出来るだろう(社会科学に於ける科学的実験に就いては後に見よう)。

実験に到着する過程は歴史的にも心理的にも又云わば存在論的にも全く必然である。よく考えて見ると、対象を静かにありのままに観察すると云っても、大抵吾々はそれを回転して見たり、後ろへ回って見たりする。手を下して対象の構造を変革して見ない迄も、自分に対する対象の位置関係は変更して見るだろう。人間的経験は初めから実験の形を持っているのである。

さて科学的認識に於ては、実験は科学上の理論と特別な関係に織り込まれる。普通実証科学の理論は実験の上に立てられると考えられている。なる程初歩的な実験ならば、そう云っただけで済むだろう。併し発達した実験はすでに一定の理論を予想していることを注意しなければならぬ。吾々はエーテルの存在するしないを知覚することは出来ない。波動理論に於ける波の干渉という理論を仮定した実験装置によって、干渉圏の有無を知覚し、この知覚をこの理論によって解釈し、この知覚をば求める事実を云い表わすものとして、先の知覚に代用するに過ぎない。