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ぎじゅつへいくもんだい

技術へ行く問題

戸坂 潤

「都新聞」1941(昭和16)年7月4日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,124 字 · 7 页

青空文庫

一 何が目標か

一 何が目標か

初めに私は、少し大胆かも知れない独断をやって除けたいと思う。この独断には尤も自分なりの動機はあるのだから、その動機から説明してかかる方がいいかも知れない。エーヴ・キュリの『キュリ夫人伝』はずい分上手に書けてある伝記だと思うが、あの内で一等感動させられたのは、キュリがラジウム製造の特許権を獲得しようかどうしようか、と夫人に相談するくだりである。

夫人はしばらく考えてから、それは止めた方がいいでしょう、と云うのである。科学は万人のものなのだから、私達が之を私するのはいいことではない、という一見ごく公式的な理由からだ。

すると夫は、併しこの特許を取っておけば後々の研究費が十分出るから、結局之が最も社会のためになるのではないか、と考え考え、反駁する。キュリ夫人は、それでもやっぱり止めましょう、と云うので結局やめになる。

之は後になって夫人にとって都合の悪い結果になった。夫人は特許権を取っておかなかったばっかりに、アメリカの有志達にラジウム会社からラジウムを買って貰わなければならず、そのお礼に、アメリカ中を見世物のように巡行しなければならなくなった。