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おしいれずいひつ
押入れ随筆
吉川 英治
「暮しの手帖」暮しの手帖社、1957(昭和32)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,648 字 · 14 页
に、夕五時頃から十一時ちかく迄、ステージの前にならんだ。そしてミスたちの、豊麗な容姿の競いを、ながめ飽いた。
投票は何回にも行われるので、私たちは一回ごとに、審査員室へもどってゆく。そして三十余名の美人を、二十名に減らし、又、十名にちぢめ、さいごの少数迄、ふるい落してゆくのである。票の集計やら、審議にも、たいへんな時間がかかって、委員たちは『こんなふうでは、授賞式も夜半になる』と心配し出していたが、私は、そんな予想よりも、だんだんに落されて、ステージから消えて行った子が、何だか、かわいそうでならなくなってしまった。
だが、彼女らの間には、ちっとも、そんな感傷は見えない。ふるい残された女性も、落された組も、さいごの栄冠をさして、なお緊張と夢みる眸を失っていないのである。もっと、さかんなのは、あの体育館いッぱいに埋まっていた数千の観衆だった。中には、ミス達の父兄や友人なども来ているのだろう。声援が送られるクチ笛が鳴る。いやもう、ミスの一人一人が前へ進むたびに、一国の英雄を祭壇に迎えるような騒ぎである。
ミスの審査員などをひきうけたのは、私にはこれで二度めだった。