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おしいれずいひつ

押入れ随筆

吉川 英治

「暮しの手帖」暮しの手帖社、1957(昭和32)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,648 字 · 14 页

青空文庫

この前の経験は、もう五、六年前である。読売新聞主催のミス・日本のときで、あれが近頃のミス・コンテストばやりの最初のものかもしれなかった。

山本富士子氏は、そのときのミス・日本であった。たしか、私の記憶に誤りがなければ、山本富士子氏と二位の準ミスの女性とは、審査員の票も意見も同数にわかれて、どっちを一位にするかでは、紛論まちまちで、ずいぶん審議が揉めたように覚えている。もしあのさい、二位におちていたら、今日の名女優山本は生れていなかったかもしれないのである。そんなことをも思い出すと、ミス東京の当夜でも、私はまた、運命論者のような運命観を、彼女らの“美”の光輝の上へ二重に見ないではいられなかった。

また、山本富士子氏が出た一例なども、近頃、ミスを送る家庭人の気もちを、ずいぶん積極的に奮わせているのではあるまいか。以前は、父兄たちは、ひどくキマリがわるがっていたものだが、こんどの大会の空気では、みじんそんなひかえめはない。外野の声援者のようなものだ。また、その気負いは、ミスたち自身の姿にもみえる。彼女らの変り方も目ざましい。背も、四肢も、化粧も、落着きも、際だって優れてきた。