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おしえのきせき
押絵の奇蹟
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,749 字 · 114 页
「これは大きい。よっぽど大きな男のお子さんに違いない。日数もいくらか延びてお生れになるでしょう」
と申しましたので、お父様は大変にお喜びになったそうです。けれどもこの婆さんの予言は当りませんで、生れた私は普通の大きさの女の子でした。只日数が一週間ばかり延びただけでしたそうですが、それでもお祖母様や、お父様は不平にお思いになるどころか、オセキ婆さんに手を合わせて、
「ああ。お蔭で安堵した」
と仰有って涙をお流しになった位だそうです。
私が生れましたのは明治十三年の十二月の二十九日で、大変に雪の降る朝だったそうですが、ちょうどお祖母様もお父様も、もう生れるか生れるかというような御心配のために疲れ切っておいでになりましたので「いよいよ生れる時まで待っておいでなさい」とオセキ婆さんが申しますままに、お座敷のお炬燵に当りながらウトウトしておいでになる間に生れたのだそうで、夜が明けてから子供の泣き声をお聞になるとお二人ともビックリなすったそうです。けれどもオセキ婆さんは気の強い女で、急いで私を見にお出でになったお父様を、
「アッチへお出でなさい。今抱かして上げます。