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ごうもんのはなし

拷問の話

岡本 綺堂

「新小説」1924(大正13)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,111 字 · 16 页

青空文庫

他の同類もあわててゆくえを晦ました。四月十二日に入牢して、吉五郎は北町奉行榊原主計頭の吟味をうけることになったが、他の同類がひとりも挙げられていないので、かれはあくまでもその犯罪を否認した。

芳吉が彼らから買い取った四枚の櫛のうちで、二枚は遠州掛川宿へ積み送るつもりで他の品物と一所に柳行李に詰め込み、飛脚問屋佐右衛門方へ托しておいたのを、町方の手で押収された。その櫛はたしかに自分の店でぬすみ取られたものに相違ないと被害者の忠蔵は証明した。それでも吉五郎はやはりそれを否認しているので、更に小間物屋の手代の徳次ら外一人をよび出して、突きあわせの吟味を行うと、手代どもは確かに彼に相違ないと申立てた。それで吉五郎も一旦は屈伏したが、あくる日になるとまたその申口をかえて、自分にはそんな覚えはない、同類の勝五郎というものの面体が自分によく似ているから、手代どもはおそらくそれを見あやまったのであろうと申立てた。しかも彼は常習犯の入墨者であって故買犯の芳吉も彼から買い取ったと白状し、小間物屋の手代共も彼に相違ないと申立てているのであるから、吉五郎の弁解は到底聞きとどけられるはずがなかった。