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きょこくいっちたいせいとこくみんせいかつ

挙国一致体制と国民生活

戸坂 潤

「改造」改造社、1937(昭和12)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,570 字 · 17 页

青空文庫

処がそれをそうとは自覚しないで、弾丸に当らないようにということだけで凡てを表現し得たと思っているから、女達の社会的政治的常識が、観念的に宙に浮いていると云われることにもなるのである。

挙国一致というものの最も端的な表現であるこの銃後の熱誠は、こうして、如何なる意味に於ても、観念的な本質のものであることを卒直に認めなければなるまい。挙国一致というものは、今日抑々民衆の手頼りの綱でさえあるのだ。と云うのは国民は之によって生活安定の安心を得たいと願っているのだ。確かにこの所謂「挙国一致」は国民に生活安定感を与えることが一応出来る。兵隊さん大いにやって下さい、と云うことで以て、気が休まるように思うのである。処がそれにも拘らず、いやそれであるが故に、この国民生活安定感は、観念的な安定感だというのである。――現実の実際の国民生活安定の代わりに、国民は、生活の観念的な安定感を与えられる。夫が軽々に理解された「挙国一致」というものの現実であると見ねばならぬ。

現に挙国一致は必ずしも国民生活の現実の安定とは平行していないのが、その証拠である。………………………………………………………………………………………………………社会生活上の不安は、挙国一致を以てしても必ずしも解消してはいない。