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きょこくいっちたいせいとこくみんせいかつ

挙国一致体制と国民生活

戸坂 潤

「改造」改造社、1937(昭和12)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,570 字 · 17 页

青空文庫

でこういうことになる。今回の事変は、云わば政治的には戒厳令的な作用を営んだのだ。近衛首相が事変勃発をキッカケとして、社会の各方面の代表者を召集し、之に挙国一致の宣誓をさせることが出来たのも、決して近衛首相の予ての常識ある態度の余徳ではない。戒厳令的政治停止の意義を、各方面の代表者がそこに直覚し得たからこそ、彼等は欣然として宣誓をやったのである。勿論今回の事変が、今回のような日本側の決意に照応して起きなかったならば、百万遍各方面代表者を召集して挙国一致を要請しても、単なる国内的な外交辞令以上に出ることは出来なかったに相違ない。だが戒厳令の政治的効用については、大分世間の認識が進んで来ていたことを、吾々は忘れてはならぬ。

併しながら、挙国一致体制によって、例の軍事予算と国民生活安定との関係、狭義国防と広義国防との関係、あの政治的根本問題はどうなったか。簡単に云えば、そういう政治的な常識問題は、挙国一致によって、問題そのものとして解消して了ったのだ。社会自身の事態は少しも変らない、或いは一層困難になって来ているかも知れない、併し夫を問題にする角度が不用になったのだ。