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りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
「新潮 第二十九卷第三號」新潮社、1918(大正7)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,398 字 · 48 页
」
「あら嫌な人ね、白ばっくれて、分ってるじゃないの。」
山田はそう云う彼女の顔をじっと見守った。彼女は云った。
「まあうまいわね、ほんとに白ばっくれることだけはお上手だわ。……それとも本当にまだ分らないの? それなら随分鈍感だわ。もうお止しなさいよ、つまんない。白ばっくれるのと鈍感なのとは結局お隣り同志だわ。電気でもつけましょうか、そしたら分るかも知れないわ。」
それでも彼女は立ち上ろうともしなかった。山田はその姿をじっと見たが、何処にも平素と異った所は見出せなかった、それから室の中にも。山田は一種の屈辱を感じて、眼を外らしながら庭の方を見やった。と、彼は急にそれに気付いた。
「あ、あれですか。」と山田は云ったまま、口をぼんやり開いていた。
「今分ったの、随分ね。」そう云いかけて秀子は山田の方を見た。「何を変な顔付をして被居るの。そんな風をしていると、あなたは丸でお馬鹿さんね。」
山田は訳の分らぬ苦笑を禁じ得なかった。
庭は植込の間々に飛石を配置し苔を置いて可なりよく拵えてあった。然し今見ると、その真中の空地に、飛石をうまく利用して、可なり大きな池が新たに造られていた。