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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页
紀元前の「顔のない死体」(というよりも「首のない死体」なのだが)の例で、私の気づいたものが二つある。その一つは、歴史の父といわれる古代ギリシアのヘロドトスの大著「歴史」の中にあるもので、同書第二巻第百二十一段の全文がこれである。(この本は邦文の全訳がある。青木巌訳、昭和十五年、生活社発行、上下二巻)。
ヘロドトスは紀元前五世紀の人だが、そのヘロドトスがエジプトを遍歴したとき、同地の古老から聴いた、紀元前一二〇〇年頃のエジプト王、ランプシニトス、一名ラメス四世の逸話である。「首のない死体」のトリックもずいぶん古いものではないか。
ランプシニトスは非常に富裕な王様で、莫大な銀を貯えていたが、それを安全に保管するために、宮殿に接して石の庫を建てさせた。ところが、その庫の建築を命ぜられた男がくせもので、壁の石の一つが、大力を出せば抜きとれるように工夫をした。外見は他の石と少しも違わないのだが、一つの石だけが動くという仕掛け、つまり密室の秘密の出入り口に当たるものを造ったのである。
これは実に遠大な計画で、その建築師は死ぬときに二人の息子を枕辺によんで、ひそかに遺言をする。