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たんていしょうせつのなぞ

探偵小説の「謎」

江戸川 乱歩

1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页

青空文庫

いつも主人と家来のような圧迫を感じている。この長年の劣等感そのものが、唯一の殺人の動機となったのである。彼は巧妙なトリックによってアリバイを作り、少しも疑われることなく殺人をなしとげる。犯人と被害者とは人もうらやむ親友であり、一方が死んでも他方に物質上の利益があるわけではなく、友の死を発見して最も悲しんでいたその男が、実は真犯人であろうなどとは、誰一人想像するものもない。これも意外な動機そのものをトリックの一つとした作品である。

また、アメリカの著名な文学作家の書いた短篇探偵小説に、こういうのがある。ある実業家の秘書をしている青年が、主人が自分をあくまで雇人として機械のようにあしらい、人間として親しみを示してくれないところから、劣等感が鬱積して、そのことだけのために、ついに殺意を抱き、大胆不敵のアリバイ・トリックを案出して、殺人罪を犯すのである。物慾ではむろんない。普通の意味の復讐とも違う。この種の犯罪は劣等感と優越感をもってこなくては説明ができないのである。

イギリスのさして著名でない作家の短篇に「動機のない殺人」という風変わりな作品がある。動機がないのではない。