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たんていしょうせつのなぞ

探偵小説の「謎」

江戸川 乱歩

1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页

青空文庫

その大統領が考案したというのは、一人の男が現在の環境から完全に逃避しようとするテーマであった。実業界に名を知られた百万長者が、現在の境遇にあき、他郷で全く別の人間として新しい生活を始めたいと考える。家族、親戚知己、自分の社会的地位など一切のものと絶縁して、生れかわりたいのだが、しかし金だけは持って行きたい。たとえば七百万弗の財産があるとすれば、そのうち二百万弗くらいを家族の生活費として残し、あとの五百万弗は持って行きたい。そして、家族や知人がいくら探しても絶対に発見されないようにしたいというのである。

いかにも大政治家や大実業家の潜在意識にありそうな願望で、ルーズベルト大統領がこういう問題を考えたことは非常に面白いと思う。東洋にはこの思想は昔からあった。高位高官の人が現世のわずらいを離れて山に入るとか、隠者の生活を送るとかいうことは珍らしくなかった。それの俗っぽいのが艶隠者である。東洋思想では金銭とも離れるのだが、アメリカの逃避は財産の大部分を持って行こうというので、さすがに現世的である。その上、生れかわって全く別の生涯を始めようというのだから、これは隠者でなくて、もっと積極的な更正である。