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たんていしょうせつだんのしょけいこう
探偵小説壇の諸傾向
平林 初之輔
「新青年 第七巻第三号新春増刊号・探偵小説傑作集」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,887 字 · 12 页
二
平気でいたら決して、こわす気遣いはなかったであろうに。
それと同じことが探偵小説についても言えるように思う。あまり立派な作品を見たあとでは、作者がかたくなって、常にせい一ぱいのものをかいて読者をあっと言わせてやろうという気で張りつめて、その結果、凝って思案にあまるような作品ができあがる。それから、殺人や、犯罪では、どうも芸術的でない、もっと奇抜な、幻想の世界を織り出して見せるのでなければ、探偵小説が芸術の中で占める椅子が失われるというような考えから、かえって、造花のような力のない作品が生まれることにもなる。
これらの傾向は、探偵小説の行き詰まり、早老を予感せしめる徴候の一つではないかと私は考える。限りあるエネルギーは最も経済的に、効果的に使用せねばならぬ。鳩を殺すには散弾で足りるとしたら、十二吋砲をすえつける必要はない。東京から大阪へ行くのを目的とする旅行者は、東海道線を利用すればよいのであって、わざわざ横浜から船に乗りかえてアメリカ経由で地球を一周してゆく必要はないのである。私はまず第一に探偵小説家諸氏に今少しの余裕をもとめる。
二
江戸川乱歩氏は、一作ごとに頭の禿げるようなことを考え出す人であると誰かが評したが、実際、思いつきが奇抜で、他人の追随を許さぬところは氏の作品は天下一品である。