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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
「上の棚でありましょう」
「きっと今に停電しよるで」
縫子が下へ行って、燈心と油と皿をもって来た。
「少し水がひきよってでありますよ」
「お母さん、横におなりませ」
ひろ子が土地言葉で云った。
「もう大丈夫らしいから。あとは気をつけますから」
「みんなも、おやすみ……どれ」
母は、着たままころりとしき並べた布団の端に横になった。
「ほん、ここはようない土地じゃのう」
つや子も、スカートのまま二人の子供たちのわきに体をのばした。
そのとき、電燈が消えた。
縫子が見つけてもって上っていた蝋燭に火をつけた。大きい影が、人々の横になっている枕もとの壁に映ってゆれた。帰れなくなって気の毒だけれども、縫子がいてよかった。ただ、一人の手がふえているというばかりでなく、ひろ子はこころもちの上でたすかっているところがあるのであった。
雨はそのまま小ぶりになった。ひろ子も寝間着にかえて床の上に両脚をのばしていると、階下で水をこいで来る人の気配がし、階段の下まで来て、
「おごうはん、おごうはん。もうおよってでありますか」
女の声がした。
「沢田のおばさんで」
縫子が、上り口の襖をあけて顔を出した。