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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
石田の店の先に、大きな角材がひっかかって道をふさいでいた。そこへ空のドラム罐、どこからか流されて来た古床几、箱、砕けた茶ダンス、木の枝をはじめ、あらゆるごもくたが積って、自転車さえかついでやっとそこをふみ越してゆくような山が出来ていた。そこでも、巣箱ぐるみ鶏が数羽流されて来て、死んでいた。やはり体が白くて、鶏冠の赤いレグホンの雌たちであった。
部落の非常時用として木炭数十俵、薪が何百束か、配給所である石田の物置に保管されていた。薪は、夜じゅうまるでおがらにでもなっていたようにふわふわぞろぞろ物置の入口へ浮き出たまま水にひかれ、今は足の踏場もなければ、女手で直せる代ものでもなくなっている。
「こりゃ百束は流れよりましたで」
登代が目分量で調べて云った。
「まだそこいらにひっかかっていやしませんかしら」
「なんで! いまごろまで……」
そう云われて、ひろ子は生計のために配られている神経の迅さに思い当った。寺の本堂の掃除をして最後にひき上げたのは、母とひろ子だけであった。夜が白みかかるのを待ちかねて、まだすこしずつ降っている雨の中を沢田の一家三人も、子供を囲んでかたまって或るものは睡り、或るものはうつらうつらしている石田のみんなの横から、そっと起き出して出て行った。