轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
月が西にまわって、蚊帳の上に大名竹の影が少し移った。どこか遠くの山よりで、故郷へかえる朝鮮人の酒盛りがあり、かすかに謡う声や手拍子の音が風に運ばれて来た。
十五
重吉のうちへ来たとき、リュックを背負って、女学生靴をはいたひろ子は、やせて、色も黒くやつれていた。
田原へ来て、笑うこともふえて、ひろ子はいくらか、ふくよかになった。朝起きて、鏡を見て、
「ほら、又すこし美人になった」
と冗談を云った。
しかし、今眠られない夜がはじまった。ひろ子は、眠った夜については、話したが、その夜々が眠りを失ったとき、決して誰にも訴えなかった。眠れない夜をもたないで生きて来ている人々というものが此の世の中にあるだろうか。まして、戦争がはじまってから。――ましてや、戦争は終ったが、幾百万のかえらぬ人々があって、その母や妻たちが、すっかり相貌の変じた彼女たちの人生について、不安をもって思いめぐらしているとき。――
重吉が獄中生活をはじめた初めの間、ひろ子と同じ立場の留守の妻たちは、少くなかった。思想犯の妻たちは、良人の入れられている拘置所の待合室でいつの間にか知り合い、事件について話し合い、互に元気を与え合った。