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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

馴れない明るさは、テニス・シャツをブラウス代りに着ているひろ子に、自分の体の輪郭までをくっきり際立って感じさせた。井戸端の電燈がついたので、いつ廊下を通っても閉った雨戸のガラスから、荒れた花壇のある深夜の庭が、はっきり見えた。久しぶりの明るさは、わが家の在り古した隅々を目新しく生き返らせたが、同時に、その明るさは、幾百万の家々で、もう決して還って来ることのない一員が在ることを、どんなにくっきりと、炉ばたの座に照らし出したことだろう。強い光がパッと板の間を走ったとき、ひろ子はよろこびとともにそのことを思いやって鋭い悲哀を感じた。

夜の明るさが、政府放送のたよりなさと拙劣さとを、ひとしおしみじみと感じさせるような雰囲気のうちに鈴木貫太郎内閣が退陣した。そして東久邇の内閣が代った。

二

杏の樹の下枝へ結びつけた荒繩の輪と納屋の軒下とにかけて、竿がわたしてある。ゆすぎ出した浴衣を、ひろ子は、その竿にかけている。

納屋では小枝が、馬鈴薯の腐ったのをよりわけていた。その年は、丁度わるい時季に雨が続いて、その地方では、麦も馬鈴薯もひどく傷められた。