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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

網走へもって行く筈の行李につめてあった秋の単衣をまたとり出して、ひろ子は駅までの行き来に着た。地図で見れば、小指の幅ほどの海、小さい陸地の裂けめ。眺め、眺めて、とうとうひろ子は、その陸地の裂けめの突端に立って、向う岸を見ていようという気になった。そこで待っていて、いざと乗れる船をつかまえよう。そういう気になった。焼けた青森の地に、バラックを立てて住みはじめたという親しい友達に、ひろ子は自分の計画を相談する手紙を出した。

三

東京港に碇泊中のミゾリー号の甲板で、無条件降伏の調印がされた。

ラジオできいていると、その日のミゾリー号の甲板に、ペルリ提督がもって来た星条旗が飾られていたという情景も目に見えるようだった。秋らしい陽の光のとける田舎の風景に、ラジオの声は遠くまで響いた。

村なかの街道は、どちらへ向いて歩いて行っても山並が見えた。耕地を越して公会堂の円屋根の遙か彼方に連っている山々。農家の馬小屋の間から思いもかけずに展がる目路に高い西の山々。どの山も、秋の山襞を美しく浮き立たせ、冬の近づく人間の暮しを思わせた。ひろ子は、ひとしお網走を恋うた。