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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
驚愕し、混乱しとりとめなく心当りに問い合わせ、さめざめと悲歎する場面も与えられないまま、直次のいない干潟のようになった生活の日々がこの家にのこされた。母とつや子が小さい二人の息子対手に、商売もなく、人気もなくなった家のなかに暮していて、東京から来たひろ子を見たとき、思わずとりすがって愁歎するそういう気持の激しいはずみさえなくしている。
若いつや子が、涙を一杯ためながらも声の調子を変えず、直次をたずね歩いた時の様子を話すのをききながら、毛穴から汗のにじみ出して来るような苦しさを覚えた。ひろ子はこの状態において、あらわれた助力者という感じでうけとられていない自分を痛切に感じたのであった。
母も、つや子も、くりかえし、くりかえし直次がよく才覚し、よく稼ぎ、よく人に振舞い、よく儲けた手柄を話した。
「ほんに、あの位やわう(柔い)に出来た人間は、たんとないと思いませ」
そして、登代は、
「直次がよう稼いでくれよったから、こういうことになっても、つましゅうすれば何とか子供らを大きくするだけは心配のうやれます」
と云った。しばらくして、登代はいかにも、遠く手たらんものを思い出している風で、