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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

「もうそろそろ重吉はんも、手紙みてじゃありましょう、のう」

と云った。

「そりゃ見てでしょう。どんなにびっくりしていなさるか。早く手紙でもよこせるといいけれど。困るわねえ、ああいうところは。――意地わるい規則があったりして――」

重吉は、治安維持法によって無期を云いわたされた。網走に移されたのはその年の六月であった。母には、巣鴨の拘置所もぐるりがすっかり焼けたので、漠然疎開のように説明してあるのであった。石田の長男である重吉のこころもちとして、父親が中風で床についたきりであった七年の間、それから直次や進三の入営、除隊、父の葬式、応召、婚礼、又出征、初孫の誕生という時々、ひろ子は出来るだけのことはして人々を満足させて来た。東京が焼け原になってしまって何一つ無くなった、ということも、殷賑だった東京と、その店々の印象を大切にもっている母には事実を疑わないまでも実感から遠いことであろう。

ひろ子が、作家として、もう五年の間、小説さえ発表させられない境遇にいるという現実も、ここのひとたちに、もとのように頼りになる者としてでないひろ子を感じさせるであろう。

四歳と二つの男の子たちが、紙風船と、色の塗ってない積木を畳の上にちらかして遊びはじめた。