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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
大きい川に沿って、低い峠や林、田圃などを間にはさみながらとびとびにつらなって上、下にわけて呼ばれているその町と、さらに二里ほど行って海岸に面した田原とが、合併されて市になった。それはこれまでのように地方の発展によって膨脹して町から市になって来た市ではなく、全く軍事的な目的のために、田圃と畑が一躍市につくられた。徳山市からその新造の市まで五里の間、一本の軍用道路が貫通されることになった。その道路は軍用トラック専用のものであり、断乎たるものであり、軍人が地図の上に引いた一本の線のとおりに必ずつくられなければならないものであった。
ひろ子が、四年前一番終りに重吉の家を訪ねたとき、母は、その新道のことを苦にしていた。
「ほん、困りじゃのう、あんた。何でも、ここの軒ぐらいの高いところへ出来るというちょる」
新道のうっとうしさと直次の三番目の召集の不安とが、からみあって語られた。二度目に召集されて入隊し、明朝乗船という前夜、直次は急性盲腸炎にかかって、とりのこされた。
そのとき集められた予備の一隊は、どこか南方へやられた。
せまい往還を荒っぽく日夜突進するバス、トラック、ダットサンの交通は、根太のゆるんだ粗末な重吉の家を朝から夜中まで震動させた。