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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
「不思議でありますねえ」
縫子はしんから偶然の符合をおどろくように濃い眉を傾けてひろ子を見た。
「ほんにミヨシというところがありました。三次とかくの。芸備線で二時間ほど広島から行ったところに」
「ふーん。そんなことってあるものなのかしら。――そいで、どういうところなの、その三次って……」
「病院はありますって」
「陸軍病院?」
「そうじゃないらしいけど……。もしかしたら、わたしつや子はんとつろうて行って見て来ようかと思って」
黙って熱心にきいていた登代が、
「その三次は、つや子はんがしらべに行きよった豊田村とはまるで別の方角のところじゃろ、のう」
「あれは万部線でありましょう」
「の、つや子はん、つや子はん、ちょいときてみさいの」
ねむりかかった治郎をあぶなっかしくおんぶして、つや子が土間から上って来た。
「のう、あんたが、先度ゆきよったのは豊田村じゃのう」
「はあ」
「そのとき、本部で、三次たらいうところのこと云わなんだか」
「さあ……」
「縫子はんが夢を見たといの、つろうて、さがしに行こうかと云うてじゃよ」
つや子は、薄すり凹んだ瞼をあげるようにして、縫子からひろ子、母へと視線をうつした。