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そうしゅ
操守
豊島 与志雄
「改造」1929(昭和4)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,418 字 · 20 页
時には事後承諾を求めた。そのお約束は、彼女はいろんなことに利用した。あまり隙な晩に、または用事に、または仲間への御礼返しに……。だからおかみさんにとっても、彼女はごく忠実な抱えっ妓だった。
そのお約束の客の名に、オーさんというのが次第にふえていって、朋輩の目についた。
「それごらんなさい、何だかだと云ったって、やっぱりねえ……。」
吉乃は笑った。
「そうじゃないわよ。あの人、どうせ、仲間なんだから、丁度いいのよ。」
謎のようなことを云って、それから変に考えこんで、その後で、自分でも不思議そうに、きょとんとした眼を挙げて、また笑った。
その頃、実際にも、オーさんの足は繁くなっていた。
二
岡野信二は、吉乃に対して、初めは、快活などこか捨鉢なほど陽気な態度だったが、度重るにつれて、妙に無口に、真面目に、淋しそうになっていった。心の中に、何か悲痛なものが動いてるようで、それも、愛とか恋とか云ったものではなく、ただ期待外れの、心が宙に迷ってるらしく……。そしてじっと、彼女の顔を眺めてることが多かった。
吉乃もそれに気付いたが、それは、彼女の商売とは関係のないことだった。