轻松读懂日语经典作品
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ぎじしんねん
擬似新年
大下 宇陀児
「宝石 一月号」1954(昭和29)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,694 字 · 10 页
ポンプの水しぶきが、頭や襟首へ冷たくかかる。しかし、人は不思議に大きな叫び声も立てず、煙と焔を見上げて彳み、消防官に追い立てられて、右へ行つたり左へ行つたりしている。
黒い煙と赤い焔が、たちまちにして、白い蒸気の色になつた。
ノミ屋のアンちやんらしいのが、駅の軒下へ運び出しておいた荷物を、両腕にかかえて立上つて、「もう大丈夫だ。ぼつぼつ商売にかからにやならねえ」といつた。燃え残つたから、この人出を幸い大いに稼ごうというつもりらしい。東京というところは、そういうところだ。他人の災難や不幸だつたら、いくらでも我慢する。こつちは金儲けさえすればいいという人間が、約八百万人集まつている。私も、考えてみると、火事を消すためじやなく、消防の邪魔になるのに、わざわざ見にきたのだから、その仲間かも知れない。
麻雀友だちで、ノミ屋だつたり質屋だつたり撞球屋だつたりしている、通称かんちやんの家は、どうやら焔の海の真ん中らしく、見舞つてやりたいが、そつちへは消防官がやつてくれない。蛇屋が焼けたそうだ。蛇の逃げ出したことだろう。蝮が逃げたら危ぶないなと思う。一週間前に、玉を百円買つて、ピース四個をもらつたパチンコ屋も、そのそばの肉屋も魚屋も焼けたらしい。