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ぎじしんねん

擬似新年

大下 宇陀児

「宝石 一月号」1954(昭和29)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,694 字 · 10 页

青空文庫

、小説を書く時の役に立つ、という意味だと思つてしまつた。そこで、やはり、大いにジーエフを知つている顔をして、「いや、あれは、まだ高いだろう。セコハンで安い出物でもあつたらね」

再び、テレビジヨンの値段を思い出しつつ答えたのであつた。

思いやりのある、優美な顔をした、この富める青年は、忽ちにして呵々大笑し、ジーエフとは何であるかを私に説明し、私の方は、顔を逆さに撫でられたみたいで、ウームと唸つたが追いつかない。まつたく、どうにも、いやはや、ほうがえしのつかぬことになつてしまつた。

×    ×    ×

もう一つ、同じような言葉の問題で、これはおかしかつたというより、ちよつとほがらかな機智の話である。

ある夜私は、近親者が相集まつた席で、敬語についての意見をのべた。

ずつと前のことだが、女中さんに、敬語を適度に用いよ、と注意しておいた。すると、飼犬が少し胃が弱くて食慾不振だつたのを心配していた私が、朝起きてその女中さんに、

「オイ、どうだつた。ベアは飯を食べたか」と訊くと、「はい、おあがりになりました」と答えたことがある。

こういう敬語は困るけれども、ということから話しはじめて、当節は世の中が混乱し、日本語の美しさである敬語が、次第にめちやくちやになると憤慨したり、「お米」