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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

現にこの女を井戸に投げ込んだと云う嫌疑を受けている支倉が、当時この屍体を平気で見に行って、誰も彼の家の女中である事に気がつかない事を確めているのではないか。

それを埋葬後三年を経過して、すっかり白骨に化している屍体をどうして、どこの何者と確定する事が出来るだろうか。

鑑識課に白骨を置くと石子刑事は鑑識がすむまで残る事にして、他の一行は再び自動車を駆って一先ず帰署する事になった。

庄司署長は結果いかにと待受けていた。

「どうだ、旨く掘り当てたかね」

彼は大島主任の顔を見ると直ぐに声をかけた。

「はい、人夫の指定した所に丁度旨く可成り長く埋まっていたらしい白骨がありました」

「そうか、それで鑑識課の方へ廻したのだね」

「はい」

「旨く鑑定が出来るか知らん」

「大丈夫だろうと思います。小林貞の骨格の特徴などが相当分って居りますし、着衣の一部なども手に入れる事が出来ましたから」

「そうか」

署長は暫く考えていたが、

「支倉の逮捕は一体どうなったのだ。一向捗らんじゃないか」

「申訳ありませんです」

主任は頭を下げながら、

「根岸が例の浅田と云う写真師を召喚して取調べて居りますから、遠からず、彼の潜伏場所が判明するだろうと思います」