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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「おい、君、鳥渡降りて来て呉れ給え」

浅田は仏頂面をしてノッシ/\と降りて来た。彼はジロリと石子を横目で睨んだ。

「支倉からこう云う返辞が来たんだ」

渡辺は浅田に支倉からの手紙を示した。

「誰が開けたんですか」

浅田は手紙を受取ると、苦り切ってそう云った。

「僕が開けたんだ。急場の場合で仕方がなかったんだ」

渡辺は押えつけるように云った。

「そうですか」

浅田は一言そう云ったきりで、暫く拡げた手紙を眺めていた。

「承知したと云う返辞を書いて貰いたいんだ」

渡辺は厳かに云った。

「ようござんす」

浅田は割に素直に返辞をした。

「支倉さんも運が尽きましたね。八幡さまの境内で、捕るようになるとは神罰とでも云うのでしょう」

網の魚

大正六年三月某日、前日午後からシト/\と降り出した春雨は夜に這入ってその勢いを増し、今日の天気はどうあろうと気遣われたのが、暁方からカラリと晴れ上って、朝はシトヾに濡れた路に所々に水溜があったり、大きく轍の跡がついているのを名残として、美しい朝日がキラ/\と輝いて、屋根からも路の上からも橋の上からも、悠々と陽炎を立たせていた。