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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「先生、どうぞ懲らして下さい。許して下さい。そうして救って下さい」

支倉は殆ど泣かん許りに掻口説いた。

お茶を運んで来た夫人はさっきから襖の外に佇んでいた。

「そう興奮しないで静かに話して下さい」

神戸牧師は宥めるように支倉に云った。

「先生、私は大変な罪を犯したのです。汚れた罪なのです」

「どんな汚れた罪でも償えない筈はありません。話して御覧なさい」

「先生、私は女を犯したのです。無垢の少女を。私は前に云った通り性慾の醜い奴隷なのです。実は一月許り前に妻が郷里の秋田へ帰りました。その留守の閨淋しさに私は女中の貞に挑みかゝり、とう/\暴力を以て獣慾を遂げて終ったのです」

支倉は云い悪くそうにポツリ/\と口を切りながら、漸く自分の罪を云い終ると、じっと顔を伏せた。

神戸氏は支倉の意外な告白に些か驚きながら、

「それは飛んだ事をしましたね」

「私の罪はそれだけではありません」

やがて支倉は顔を上げて、情けなさそうに云った。

「私は女に忌わしい病気をうつして終ったのです」

「え、え」

泰然として聞いていた牧師も余りの事に思わず声を上げた。彼はそんな忌わしい病気に犯されているのだろうか。