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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
「手紙見た。丁度金の欲しい所であるから、折角の十万円頂戴する事にしよう。忘れずに用意をして置け」
手紙はそんな意味だった。
支倉喜平の大胆不敵の振舞に少しく不安を感じた石子刑事は渡辺刑事と相談の上、遂に委細を司法主任の大島警部補に報告した。
「ふん」
赤ら顔の大島主任は眉をひそめて、
「成程、そいつは厄介な奴だ。抛って置いては警察の威信にかかわる。出来るだけ早く捕えて終おう。ついては石子君、決して君の手腕を疑う訳ではないが、こいつは一つ根岸君に加勢して貰おうじゃないか。こう云う横着な奴にはどうしても老練家が必要だからね」
根岸と云うのは当時署内切っての老練な刑事で、警察界には二十年近くもいるのだった。他署で鳥渡失策った事があって、官服に落されようとしたのを危く免れてこの署に転勤して、私服予備と云う刑事よりも一段低い位置にいた時にすら署内の刑事残らず指揮した程だった。石子は根岸とは親しい仲だったので格別不服はなかった。
「徹宵の張り番とは中々骨を折ったね」
話を聞いた痩ぎすの根岸刑事は、浅黒い顔を緊張させながら石子刑事に云った。
「然し張込みは対手に悟られると効果が薄いよ。